広岡裕児

水が高いところから低いところへと流れるのとは逆に、人は低いところから高いところへと向かおうとする。貧しいところから豊かなところへ。危険なところから安全なところへ。周縁からメトロポールへ。それは一国内だけでなく、国際的にも同じであり、人は「低い国」から「高い国」を目指そうとする。この動きは誰も押し止めることはできない。すべてをローラーで平準化しようとするかのようなグローバリゼーションが後押しするからだ。ところが、その「格差」の平準化を目指す動きが、さらに新たな「格差」を生むことになる。この「格差」をめぐる無限運動こそが、世界を覆う最大の問題でありつづける。そしてEUもまた、この「格差」の無限運動に巻き込まれ、立ちすくんでいる。内に反EUのうねりとテロリストの予備軍を抱え、外からは難民が押し寄せることで……。